形成外科
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 形成再建外科学 教授 樫山 和也
准教授 岩尾 敦彦、助手 葉石 慎也
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形成外科について
形成外科は、体に生じた組織の異常、変形、欠損、または見た目に対する不満を改善し、機能面と見た目の両方をより自然で美しく整えることで、患者さんの生活の質(Quality of Life)の向上を目指す外科系の専門領域です。当院の乳腺センターでは、乳房再建術を提供しており、乳がん治療後の生活をより前向きなものにするためのお手伝いをしています。
乳房再建術の目的
乳房再建術の主な目的は、乳がん治療後に失われたまたは変形した乳房の形を手術で新たに作ることです。しかし、それだけでなく、再建を通じて患者さんが精神的に前向きな気持ちを取り戻すサポートも重要な役割を果たします。
乳房再建の時期
乳房再建は、一般的に乳がんの手術と同時に行う「一次再建」と、術後一定期間を空けて行う「二次再建」に分けられます。
一次再建
メリット:手術回数や費用が抑えられること、乳房喪失感を軽減できること。
デメリット:再建の方法を考える時間が限られること。
二次再建
メリット:乳がん治療後の精神的な安定期に手術の必要性や方法を検討できること。
デメリット:手術回数や経済的な負担が増えること、乳房喪失感が続く可能性があること。
*再建時期については、主科となる乳腺外科の要請に応じて決定します。
乳房再建の方法
乳房再建には以下の2つの方法があります:
1. 人工物(インプラント)による再建
人工乳房(ブレストインプラント)を用いた方法です。必要に応じて組織拡張器(エキスパンダー)を使用し、3~6か月かけて胸の皮膚を広げた後、最終的にインプラントを挿入します。
メリット:手術時間が短く、回復が早い。他の部位に傷を作らない。
デメリット:人工物のため、破損や変形のリスクがある。破損があればインプラントの交換や、自家組織による再建が必要となる。
2. 自家組織による再建
自分の体(腹部や背中)から採取した組織を使って再建する方法です。
メリット:自然な質感や形を保ちやすい。インプラントよりメンテナンスが少ない。
デメリット:手術時間や入院期間が長くなる。他の部位に傷が残る。
(乳癌切除時に組織拡張器を挿入して皮膚を拡張した状態で、後日自家組織を用いて再建を行う場合もあります。)
◯腹部の組織を使用
お腹の皮膚や脂肪、筋肉を血管ごと採取し、胸の血管とつなぎ合わせて移植する方法です。組織量が多く、大きな乳房にも適しています。
◯背中の組織を使用
広背筋と皮膚・脂肪を血管が繋がった状態で移植する方法です。腹部と比較すると、採取できる組織量が少ないため、小さめの乳房に適しています。
*再建方法は、患者さんのご希望や体型、既往疾患などを総合的に考慮したうえで、形成外科が決定します。
最後に
乳房再建術は、乳房を失った患者さんにとって、身体的・精神的な回復の大きな一歩となる手術です。当院では、患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療を提供し、治療法や時期について十分にご説明いたします。不安や疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
長崎大学病院 形成外科ホームページ:https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/plastics/